相続税コラム
「相続対策はまだやらなくていい」?
「相続対策はまだやらなくていい」というお言葉を耳にすることがあります。
「相続なんてまだまだ何年(何十年)も先の話だろう」「うちは対策なんてしなくてもどうにかなるだろう」といった理由だろうと推測できます。
たしかに先のことを考えすぎてもなんだか億劫になるし、なにも対策を行わなくても問題なく相続税を納めることができたり遺産分割も滞りなく行えるかもしれません。
しかし相続対策の中には早めに実行したり時間を掛けて実行するからこそ効果があるものも少なくありません。 その一例として、例えば生前贈与。 暦年贈与であれば受贈者あたり年間110万円までは基礎控除として贈与税はかかりません。 数年かけて何度も基礎控除内で贈与したり、想定相続税率が高い方なら贈与税率10%程度で少し贈与税を払いながらの贈与を何度か行うのも効果的です。 一回あたりの贈与額としては少額でも、何度も行ってさらに複数の者に贈与すれば全体としてはかなり大きな効果が見込める可能性が高くなります。
また相続対策を実行するにあたって意思能力の問題も重要です。「まだ相続対策はいい」と思っているうちに認知症にかかることも現代の世の中では決して他人事ではありません。 認知症にかかってしまっていれば生前贈与や遺言書を作ることや、ましてやアパートを建てたり土地を売却する契約なんてできません。 だからといって親族が代わりに行ってしまえば大きな問題となり、そもそも無効となる場合だってあるでしょう。
加えて、生前贈与の場合には相続税の3年加算のルールも考慮する必要があります。 相続発生直前の3年以内に相続人に対して行われた贈与については、その贈与財産を相続税の対象となる財産に加えて計算をしなければなりません。 相続発生の直前にあわてて贈与をしたところで相続税対策としての効果はほぼ期待できないのです。
これらのことから、相続対策は早め早めにじっくり時間を掛けて行ってみてはいかがでしょうか。 あわてずじっくり長くの相続対策、おすすめです。
※本稿は令和1年6月時点の税制に基づき執筆しています。文中の「3年加算」は令和6年1月1日の贈与より「7年加算」に改正されています。