相続税コラム

相続発生後の手続き ~法務局編~

相続が発生した際に必要となる手続きのうち、ここでは法務局(登記所)で行う手続きについて取り上げます。

※本稿は令和3年12月時点の法令及び各情報に基づき記載しています。

1. 土地・建物の相続登記

 相続が発生し遺言書または遺産分割協議の成立により被相続人が所有していた土地・建物を引き継ぐ人が確定すると、所有権登記を変更することになります。相続登記の概要は以下の通りです。

① 登記申請する法務局

 土地・建物の登記を申請する法務局は不動産所在地を管轄する法務局です。紙面による申請の他に、マイナンバーカードを使用してオンライン申請をすることもできます。

② 登記申請に必要な書類

主なものとして以下のものが必要となります。

・固定資産評価証明

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等

・被相続人住民票の除票

・相続人全員の戸籍謄本

・相続関係説明図

・遺産分割協議書

・印鑑証明

その他、相続の状況により必要書類が異なります。

③ 相続登記にかかる費用

・相続登記の登録免許税 固定資産税評価額の0.4

・司法書士報酬

・上記の他に、添付資料を取得する際の費用がかかります。

・なお相続で土地・建物を取得した際、不動産取得税は課税されません。

④ 令和3年現在相続登記は義務ではないが、令和6年4月1日より義務化される

 令和311月現在は相続登記については義務ではなく期限もありませんが、不動産登記法改正により令和6年(2024年)4月1日より相続登記の義務化が施行されることとなりました。相続登記が義務化されれば不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならないことになり、これを怠った場合は過料が課せられることになります。

 現在は登記に義務はないと言っても、土地・建物を売却や賃貸したり担保設定したりする際には権利関係を明確にするため相続登記が必要となりますので、相続により承継することが決まったら速やかに登記申請することをお勧めします。

⑤ 相続登記は司法書士に依頼するのが一般的

 他人から報酬を受け相続登記を業として行うことができるのは司法書士または弁護士に限られます。近年ではオンライン申請が整備され相続人本人が登記申請したことも耳にしますが、まだまだ相続登記は資料収集も含めて煩雑であり本人が行うことは簡単ではありません。そのため相続登記は専門家に依頼することになり、特に司法書士に依頼することが一般的です。また状況によっては相続登記を完了したい期日までのスケジュールに余裕がなく不備が許されないこともありますので、リスク回避のためにも司法書士等の専門家に依頼することをお勧めします。

参考リンク:法務省ホームページ 未来につなぐ相続登記

https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki_top.html

2. 法定相続情報証明制度

① 法定相続情報証明制度の概要

 相続が発生し金融機関・相続税申告・年金・相続登記等の手続きを行う際に、従来は戸籍の束を提出していましたが、手続きの負担軽減を目的に平成29年より開始された制度です。

 法務局に戸除籍謄本等の束と法定相続情報一覧図を提出すると、登記官が認証文を付した写しを必要な通数だけ無料で交付します。その後の各手続きはこの一覧図を提出することで戸籍の束を何度も出し直す必要がなくなります。なお、本制度を利用せずに従来通り戸籍の束により各相続手続きを行っても問題ありません。

② 申出をする法務局(登記所)

以下のいずれかの法務局(登記所)に申請をします。

 ・被相続人の本籍地(死亡時の本籍)

 ・被相続人の最後の住所地

 ・申出人の住所地

 ・被相続人名義の不動産の所在地

③ 法定相続情報証明制度に係る費用

 本制度は無料で利用できます。ただし戸籍謄本等の取得に所定の手数料が必要となります。また郵送による申出等では郵送料がかかります。

④ 代理人に申出を依頼することもできる

 本制度の申出は相続人本人だけでなく、申出人から依頼を受けた代理人が行うことができます。代理人となることができるのは親族の他に、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士です。

参考リンク: 法務局ホームページ 法定相続情報証明制度の具体的な手続について

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html